トーテムポール金松
トーテムポール金松は背が高い。
金松はなぜか日中は全くと言っていいほど動かない。彼曰く動くモチベーションがないからだと言う。
夕方ようやく彼は動き出す。彼曰く動くモチベーションが湧くのだと言う。
どういうことかと言うと、彼は自分の影を見るのが嫌らしい。
お昼の時間は太陽が真上にあるため、彼は自分の影を見なくて済む。しかし、陽が傾き、夕方になってくると影が伸び、彼はいやでも自分の影を見なくてはいけなくなる。
影は彼にとって恐怖の象徴だった。影は自分に刻まれた家族一人一人の顔が真っ黒に染め、周りと全く同じ色をした自分の輪郭だけを残す。
夜は最悪だ。周りの黒さと自分の影が完全に溶け合い、自分というものが感じられなくなる。その感覚が嫌で金松は新しい木彫りの顔を作って自分の頭に乗せる。掘り方にこだわれば、影もユニークになるらしい。
夜が明け、影がだんだん短くなると、彼は眠りに入る。眼が覚めると夜、頭に乗せた顔が新しい顔になる。そしてまた、夜に新しい顔を作る。