赤ずきんちゃんremix
昔々、あるところにそれはそれは可愛らしい女の子がいました。
あるとき女の子のお母さんは女の子に赤いずきんを作ってあげました。そのずきんがとてもよくにあうことから、女の子は「赤ずきんちゃん」と呼ばれました。
ある日赤ずきんちゃんはお母さんに呼ばれました。
「私昨日神様にお告げを受けたの。お前さんは運命の人と森深くにある山小屋で出会う。行って確かめてきなさい。」
赤ずきんちゃんは大喜びです。
「赤ずきんの運命の人ですって!なんて素敵なの!」
赤ずきんちゃんは急いで家を飛び出し、森の中にある小屋に向かいました。
赤ずきんちゃんが森の中を走っていると、そこへオオカミがやってきました。
「こんにちは、赤ずきんちゃん。今日も可愛いねー。急いでどうしたの?」
「これから赤ずきんの運命の人に会いに行くの。きっと背の高いイケメンよ、残念ながらあなたとは大違い。あなたは無駄にタッパがあって、筋肉ゴリゴリで、口が無駄に大きい。」
「そんないきなりディスらなくても。ところでその運命の人はどこにいるの?」
「この道をまっすぐ行ったところにある小屋にいるの。ここからだと歩いて10分ほどよ。」
「ふむふむ、10分か。」
オオカミは考えました。
(これは赤ずきんちゃんと結婚できる絶好のチャンス。何としても逃してなるものか!)
「ところで赤ずきんちゃん。運命の人に会うのにその格好で行くのかい?その格好じゃ運命の人も赤ずきんちゃんが運命の人と気づかないかもしれないよ。」
「そうなのかな?」
「そうともさ、女の子は頭に花を挿したほうがもっと可愛くなるよ。ほらそこにお花畑があるからそこでちょうどいい花を探すといいよ。」
「わかったわ、オオカミさん。そうするわ。」
赤ずきんちゃんはそういって花畑で好みの花を探し始めました。
「うーん、赤ずきんに似合うのは、この黄色のお花かしら。いやいや、この水色も可愛いわ。」
赤ずきんちゃんがお花選びで迷っているうちに、オオカミは急いで小屋に向かいました。
オオカミがトントンと戸を叩くと
「誰ですか。」
と中から小さな小太りの男が出てきました。オオカミは男を丸呑みにすると中に入り、”運命の人”を探しました。しかし中には誰もいませんでした。
「フーンフフーンフーン♫」
そのとき小屋の外から鼻歌が聞こえてきました。窓から見ると、そこには紫の花を頭につけた赤ずきんちゃんが小屋に近づいてきているところでした。
オオカミは慌ててその場にあった服を着て、”運命の人”になりすましました。
トントン。
「こんにちは。赤ずきんちゃんです。よかったら中に入れてくださいな。」
オオカミは慌ててドアを開けました。
「やあ赤ずきんちゃん。初めまして。実は僕は今日君が訪ねてくる夢を見たんだよ。」
「うそ!これって本当に運命だわ。赤ずきんもあなたに会いにここへやってきました。」
赤ずきんちゃんはオオカミに近づきました。
「あなたって背が高いのね。赤ずきん、背が高い人が大好き。」
オオカミは事前に厚底の靴を履いて背をかさ増ししていました。
「あなたって筋肉モリモリで体が大きいのね。赤ずきん、マッチョな人が大好き。」
オオカミは事前に服の下に布を入れ、体を大きく見せていました。
「あなたってお口が大きいのね。お口が大きい?」
赤ずきんちゃんがふと我に帰ると、オオカミは赤ずきんちゃんを丸呑みにしてしまいました。
すっかりお腹いっぱいになったオオカミはそのままいびきをかいて寝てしまいました。
オオカミのお腹の中では赤ずきんちゃんがシクシク泣いていました。
「なんてことになってしまったの。運命の人がオオカミだったなんて。赤ずきんはこのまま死んでしまうの?」
「いや、まだ希望を据えちゃいかん。」
真っ暗なオオカミの胃の中で返事がありました。赤ずきんちゃんは慌てて声に応えました。
「でもどうやって?」
「私は斧を持っている。あいにくオオカミの食べたられた時に腕を怪我して力は入らないが、君が力を貸してくれたらオオカミのお腹を割いて外に出られるかもしてない。」
「わかったわ。」
赤ずきんちゃんは姿の見えない声に不安を感じましたが、ここから出るためならなんでも協力する覚悟でした。
「すまない、手を伸ばしてくれないか。」
赤ずきんちゃんは手を伸ばしました。ちょっとすると、
「!?」
生暖かい手が赤ずきんちゃんの手を取りました。赤ずきんちゃんは最初こそ嫌がりましたが、暗闇の中で唯一の温かみに心を許しました。
「さあここを強く握るんだ。合図したら勢いよく前に振るんだよ。」
赤ずきんちゃんは手に持つ木の食感と、上からかぶさる肌の感覚を感じながら、合図を待ちます。
「今だ!」
赤ずきんは勢いよく斧を振りました。すると目の前が急に裂け、光が入ってきました。
「ひどい目にあったわ。」
赤ずきんちゃんはオオカミのお腹から出ると先ほどの声の主が気になり裂けたオオカミのお腹を覗き込みました。すると中から小太りの小さな男の人が出て着ました。眉は垂れ、いかにも優しそうな男の人でした。
「いやーお嬢ちゃん、さっきは助かったよ。ありがとう。」
男が握手を求めると赤ずきんちゃんはドキドキしながら手を出しました。
(え、なんで私ドキドキしている?)
赤ずきんちゃんは自分がなんでドキドキしているかもわからず、黙って握手をしました。
(きっとこの人が運命の人なんだわ。間違いない。)
「私、赤ずきんと言います。あなたのお名前は?」
「僕はベンさ。」
「ベンさん、あなたこそが私の運命の人です。結婚を申し出てくださらない?」
「結婚?それは困ったな。ハハッ。あいにく僕はもう妻もいるし、子供もいる。ちょうど君くらいのね。」
赤ずきんちゃんは愕然としました。
(この人が運命の人じゃなかったの?)
赤ずきんちゃんは虚無感を抱えながら小屋を後にしました。
家へ帰ると母は赤ずきんちゃんに聞きました。
「運命の人はいた?」
「いなかったわ。お母さんの勘違いだったようね。」
「あらーそれは残念。今度はちゃんとお母さんが探してきてあげるからね。赤ずきんちゃん、お前さんはどんな人がタイプ?」
「小太りで、眉が垂れて、優しい人。」